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賃金は労働者にとって、日々の生活の重要な糧となります。労働基準法においては、賃金が確実に労働者に支払われるように、いくつかの規制を設けています。
1. 通貨払いの原則
賃金は、原則として「通貨」で労働者に支払われなければなりません。通貨とは、交換価値の媒体として、一国内で通用が認められるもので、具体的には貨幣(銀行券、鋳造貨幣)のことをいいます。 したがって、小切手や商品券、自社製品等で支払うことは認められていません。 ただし、労働協約に別段の定めがある場合には、通勤定期券等の現物供与が認められます。
なお、最近ではごく当たり前に行われている口座振込みですが、労働基準法施行規則では、「労働者の同意を得た場合」で「労働者の指定する銀行その他の金融機関」の本人名義の口座に振り込むことを例外的に認めています。したがって、口座振込みを強制したり、金融機関を限定して本人口座を開設させるのは、法令の趣旨に沿うものではありません。
2. 直接払いの原則
賃金は、原則として、労働者本人に対して直接支払われなければなりません。したがって、賃金を労働者以外の者、例えば親権者などの法定代理人や労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは直接払いの原則に反することになります。
3. 全額払いの原則
賃金は、原則として、全額支払われなければなりません。これは、賃金のうち一部を控除(徴収)してはならないことを意味します。したがって、口座振込みによる振込手数料を控除したり会社立替金を勝手に相殺したりすることは全額払いの原則に違反することとなります。ただし、次の場合は例外的に控除が認められます。
(1) 法定に別段の定めがある場合(所得税等の税金の徴収、社会保険料の本人負担分の徴収など)
(2) 労使協定がある場合には、社宅賃料や社内預金、社員旅行の積立金等を控除できます。
4. 毎月1回以上払いの原則
賃金は、原則として、毎月1回以上支払われなければなりません。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるものについては例外とされています。
5. 一定期日払いの原則
賃金は、原則として、一定期日に支払われなければなりません。一定期日とは期日が特定され、その期日が周期的に到来することをいいます。通常は毎月20日や25日など暦日で定めることが多いですが、月給制では毎月月末、週給制では毎週金曜日としても差し支えないとされています。
賃金支払日が休日の場合には、一般的にはそれより前の営業日に繰り上げて支給することが多いですが、就業規則に定めることにより、繰り上げのみならず翌日等に繰り下げて支給をすることも可能です。ただし、毎月月末を支給日としている場合には、繰り下げをしてしまうと翌月支給となり、4の毎月1回以上払いの原則に違反してしまうため注意が必要です。
なお、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるものについては、4と同様に例外とされています。
中川税理士社労士事務所
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